1. 売却価格ではなく、入金と支出の時期まで表にする
家を売った後に使える金額は、売買代金と同じではありません。最初に「受け取るお金」「売却するために支払うお金」「住宅ローンの返済」「売却後に確認する税金」を別の列にします。手付金、残代金、各費用の支払時期も書くと、決済日に必要な資金を見落としにくくなります。
費用は物件の種類、価格、権利関係、ローン残高、境界や建物の状態、契約方法で変わります。以下は発生し得る項目の一覧であり、すべての売却で必要になるわけではありません。不動産会社、金融機関、司法書士、土地家屋調査士などから見積りを取り、確定・概算・未確認の印を付けて更新しましょう。
- 入金:手付金、残代金、固定資産税等の精算金など
- 支出:仲介、契約、登記、ローン、測量・整備、引越しなど
- 決済:ローン完済額、抵当権抹消の段取り、当日持参する資金
- 売却後:譲渡所得の資料整理、申告要否と特例の確認
2. 仲介手数料は法令上の上限と合意額を分けて確認する
仲介で売買契約が成立した場合に宅地建物取引業者が依頼者から受け取れる報酬には上限があります。媒介会社が課税事業者の場合、報酬計算の基礎となる売買代金(取引に係る消費税等相当額を含まない)のうち、200万円以下の部分は5.5%、200万円超400万円以下の部分は4.4%、400万円超の部分は3.3%を乗じて合計するのが原則です。免税事業者では計算が異なり、800万円以下の宅地・建物には別の特例もあり得るため、事業者区分と上限額を見積書で確認します。
上限は必ず請求される定額ではなく、その範囲で媒介業務の内容を踏まえて合意する金額です。媒介契約前に、どの価格を計算の基礎にするか、税込上限と合意額、支払時期を確認します。依頼者が特別に依頼した広告等の実費を別途負担する場合は、内容、金額、事前同意の方法を書面へ残してください。売出価格を変更した場合は、成約想定価格に合わせて手取り表も更新します。
3. 売買契約書の印紙税と契約関連費用を分ける
紙で作成する不動産売買契約書は、記載された契約金額などに応じて印紙税の対象となり得ます。国税庁は不動産の譲渡に関する契約書の税額と軽減措置を案内しています。軽減の対象期間、契約書の通数、原本を誰が保管するかで準備が変わるため、契約日より前に担当者へ確認します。電子契約の取扱いも、利用サービスと作成する文書の実態に沿って確認が必要です。
印紙代とは別に、契約条件の確認を弁護士等へ依頼する費用、遠方からの交通費、証明書の取得費、契約後の引越しや残置物処分費が生じることもあります。手付金を受け取っても自由に使えるとは限らないため、解除条項や違約時の扱いを読み、決済が終わるまで余裕資金を残します。
- 紙・電子のどちらで契約するか、原本は何通作るか
- 契約金額に対応する印紙税と軽減措置の適用時期
- 手付金の受領日、残代金の決済日、解除時の扱い
- 証明書、専門家相談、移動・引越しなどの周辺費用
4. 登記と住宅ローンは、金融機関・司法書士の見積りを取る
住宅ローンが残る物件は、決済時に残債を完済し、抵当権抹消登記を行う段取りを組むのが一般的です。金融機関へ完済予定日を伝え、残高、繰上返済手数料の有無、抹消書類の受取方法と所要日数を確認します。登記名義人の住所・氏名が現在と違う、相続登記が未了、共有者がいるといった事情では、先に別の登記や書類が必要になることがあります。
登録免許税、証明書取得費、司法書士報酬は項目を分けて見積りを依頼します。売主と買主のどちらが何を負担するか、司法書士を誰が手配するかも取引ごとに確認します。完済書類の準備が決済日に間に合わなければ引渡しへ影響するため、費用だけでなく申込み期限も手取り表へ入れてください。
5. 測量・建物・引渡し準備は、実施条件を決めて見積もる
土地や戸建てでは、境界確認、測量、越境物の調査、残置物撤去、解体、建物状況調査などが候補になります。どれも全物件で一律に行うものではありません。買主へ渡す状態、契約条件、既存資料の有無を媒介会社と確認し、必要なら土地家屋調査士や建築士等へ範囲と納期を相談します。先に工事を発注せず、売出しや契約へどう反映するかを決めましょう。
マンションでは、管理組合・管理会社から管理関係資料や調査報告を取り寄せる費用が設定されている場合があります。戸建て・マンションとも、ハウスクリーニング、修繕、仮住まい、引越し、家財保管の費用を分けます。修繕すれば必ず高く売れるとは限らないため、現状で売る場合との条件差を比べて判断します。
- 土地:境界確認、測量、越境対応、解体・整地
- 建物:状況調査、修繕、清掃、設備・残置物の処理
- マンション:管理資料の取得、駐車場等の解約・引継ぎ
- 生活:引越し、仮住まい、荷物保管、住所変更
6. 譲渡所得は購入時資料をそろえて専門窓口へ確認する
土地・建物の譲渡所得は、売買代金そのものにそのまま税率を掛ける考え方ではありません。国税庁は、譲渡価額から取得費と譲渡費用を差し引く基本的な整理を示しています。仲介手数料や売主が負担した印紙税などは譲渡費用となり得る一方、維持管理の支出がすべて含まれるわけではありません。購入時の契約書、代金・仲介費の記録、建築資料、売却費用の領収書を保存します。
所有期間、居住状況、過去の特例利用、共有持分、相続などで税務上の扱いは変わります。マイホームの特例にも要件や併用関係があり、売却益が出ないように見えても申告確認が必要な場合があります。契約前または遅くとも申告期限より十分前に、資料を持って税務署や税理士へ相談し、この記事だけで税額や申告不要を判断しないでください。
7. 契約前・契約時・決済後の3回でチェック表を更新する
契約前は概算成約価格を複数置き、仲介手数料、ローン完済、登記、物件整備、引越しを差し引きます。契約時は実際の価格、引渡し条件、費用負担、支払日で置き換えます。決済後は領収書と精算書を照合し、税務用の保存フォルダーへ移します。金額の横に見積日と確認者を書けば、古い数字を使い続けるのを防げます。
手取り見込みには、未確定費用と予備費を残してください。売却時期や価格は保証されず、境界・登記・ローンの確認に想定以上の期間がかかることもあります。見積りがそろわない段階で住み替え先の支払いを確定させず、資金と日程の両方に余裕を持った計画にします。
- 契約前:価格別の手取り概算と未確認項目
- 契約時:確定価格、費用負担、支払日、引渡し条件
- 決済後:精算書、領収書、購入時資料、税務相談記録