1. 告知は、法的な結論より先に事実を集める

売却準備では、媒介会社の書式に沿って土地・建物の状態や設備を整理します。書式の名称は物件状況報告書、告知書、付帯設備表など会社によって異なります。まずは「売主が知っている事実」「資料で確認できる事実」「調査していない・分からない事項」に分け、推測で正常・異常を断定しないことが基本です。

民法には、引き渡された目的物が種類・品質・数量について契約内容に適合しない場合の規定がありますが、個別の責任は契約内容、事実、通知時期などで変わります。告知書だけで責任の範囲が決まるわけではありません。気になる事実を先に一覧化し、契約条項への反映は媒介会社や必要な専門家と確認します。

2. 建物と土地は、場所・時期・現在の状態まで書く

建物では、雨漏り、シロアリ、給排水、傾き・ひび割れ、腐食、火災・浸水、増改築、修繕、アスベストや耐震に関する資料の有無などを確認します。単に「漏水あり」とせず、部屋・箇所、発生日、原因が判明したか、修繕日、施工会社、現在の状況を分けて書きます。診断できない内容は専門用語で断定しません。

土地では、境界標・測量図、越境、地盤・沈下、土壌、過去の利用、擁壁、通行・配管、近隣との取り決めなど、物件と書式に応じた項目を整理します。隣人から聞いた話と、公的資料や専門家の調査結果は区別します。共有、借地、私道など権利関係があれば、登記・契約資料もまとめます。

  • 場所:部屋、壁・床・天井、敷地の方角や境界位置
  • 時期:発見日、発生期間、修繕・点検日
  • 対応:調査者、施工会社、工事内容、保証・報告書
  • 現在:再発の有無、使用状況、未調査・不明の範囲

3. 設備表は、残す・外す・借りているを分ける

設備は、給湯器、キッチン、浴室、トイレ、空調、照明、インターホン、太陽光発電、床暖房などを部屋ごとに確認します。それぞれについて、引渡し時に残すか撤去するか、売主の所有物かリース・レンタル品か、通常使用できるか、最後に動作確認した日を記録します。

「故障なし」は将来の性能保証と受け取られかねないため、確認した操作と日付を具体的にします。リモコン、鍵、取扱説明書、保証書、予備部品の有無も一覧にします。買主から修理や撤去の希望が出た場合は、口頭合意で済ませず、誰がいつまでに何を行うかを契約書や合意書へ反映します。

  • 残置・撤去の区分と、造作・家具の範囲
  • 所有・リース・レンタルと、契約の引継ぎ可否
  • 確認した動作、確認日、既知の不具合・使用制限
  • 鍵、リモコン、説明書、保証書などの付属品

4. 写真・報告書・領収書を、告知内容の根拠と結び付ける

修繕履歴は、見積書、請求書、領収書、工事写真、保証書、点検報告書を日付順に並べます。ファイル名に場所と日付を入れ、告知書の該当項目から参照できるようにします。資料が見つからない場合は「工事済み」と推測で書かず、記憶している範囲と資料未確認であることを区別します。

マンションでは、管理規約、使用細則、総会資料、長期修繕計画、管理費・修繕積立金、専用使用部分の資料も確認します。戸建て・土地では、建築確認、検査済証、設計図、測量図、境界確認書などを探します。どの資料を買主へ渡すかは媒介会社と決め、個人情報を含む書類は必要部分を確認して扱います。

5. 建物状況調査は、対象範囲と実施時点を確認する

宅地建物取引業法上の建物状況調査は、国の登録を受けた既存住宅状況調査技術者講習を修了した建築士が、所定の方法で実施します。調査結果そのものに一律の有効期限はありませんが、重要事項説明の対象となるのは、木造戸建てでは調査実施から1年以内、鉄筋コンクリート造等の共同住宅では2年以内の結果です。調査日、対象部位、調査できなかった箇所、契約時点での状態変化を確認します。

建物状況調査は、建物に不具合が一切ないことや、将来も不具合が起きないことを保証するものではありません。設備、配管のすべて、耐震性、法令適合性などが同じ範囲で分かるとも限りません。調査後に漏水等が発生した場合は、古い報告書だけを渡さず、変化した事実を告知内容へ追加します。

  • 調査者の資格と講習修了、調査の実施日
  • 対象部位と、立入り不能など調査できなかった範囲
  • 劣化事象の有無と、追加調査・修繕提案の扱い
  • 契約・引渡しまでに起きた状態変化の更新

6. 心理的影響が問題となる事項は、独断で省略しない

国土交通省は、人の死に関する宅地建物取引業者の調査・告知についてガイドラインを公表しています。これは宅地建物取引業者が宅地建物取引業法上負うべき義務を判断する際の基準を整理したもので、売主の民事上の責任を含むすべての個別問題を一律に決めるものではありません。

人の死、近隣・騒音、事件・事故など、買主の判断へ影響し得ると考える事実がある場合は、売主だけで告知不要と決めないでください。媒介会社から質問を受けたら知っている範囲を正確に答え、時期、場所、情報源を記録します。プライバシーにも配慮が必要なため、伝える範囲に迷う場合は媒介会社や弁護士へ相談します。

7. 契約前と引渡し前に、全書面の内容をそろえる

販売中は、広告、販売図面、内覧時の説明、告知書、設備表で内容が食い違っていないか確認します。購入申込みが入ったら、買主の希望と既知の状態を売買契約書案へ反映し、残す物、修理する物、現状で渡す物を読み合わせます。告知書の控えと提出日も保存してください。

契約後も引渡しまで物件を管理し、故障、漏水、破損、撤去予定の変更などがあれば、写真と日付を付けて速やかに媒介会社へ連絡します。引渡し前の現地確認では設備表と鍵・付属品の一覧を使い、双方の確認結果を残します。責任範囲の変更が必要なら、口頭ではなく合意書等で整えましょう。

  • 広告・販売図面と告知書・設備表の一致
  • 売買契約書の物件状態、修繕、撤去、責任条項
  • 契約後に発生・判明した変化の通知記録
  • 引渡し前確認、鍵・付属品、最終状態の記録