1. 利回りと手元のお金は同じではない
広告の利回りは物件を絞る目安であり、その割合が毎年手元に残るわけではありません。空室に加え、管理委託料、共用部費用、保険、税、修繕、入退去費用が発生します。借入れを使えば元金と利息も返済するため、利回りとは別に現金収支を作ります。
最初に目的、運用期間、自己資金、生活防衛資金、許容できる損失を整理します。「節税」「家賃保証」といった一つの説明だけで進めず、収入減と支出増を先に考えます。金融庁も元本割れリスクと分散を示しており、不動産への資産集中も確認が必要です。
2. 表面利回りと実質利回りの前提をそろえる
表面利回りは、一般に年間家賃収入を物件価格で割って計算します。年間家賃が120万円、価格が2,000万円なら6%ですが、広告では満室想定賃料で算出され、取得費用や運営費を含まないことがあります。広告の数字を見るときは、現在の賃貸借契約に基づく賃料か、満室想定か、共益費や駐車場収入を含むかを確認します。
実質利回りは運営費や取得費を反映する考え方ですが、統一された表示式とは限りません。比較するなら、自分で同じ式に直します。一例は「年間家賃収入-年間運営費」を、物件価格と取得時費用の合計で割る方法です。ローン返済前の指標なので、借入条件が違う物件の手残り比較には、別途キャッシュフローが必要です。
- 家賃は現況、満室想定、査定のどれか
- 管理費、修繕積立金、管理委託料を控除しているか
- 仲介、登記、融資など取得時費用を分母に含むか
- 税込み・税引き前など計算条件がそろっているか
3. 月次と年次のキャッシュフローを別々に作る
月次表には賃料などの入金を置き、管理委託料、管理費・修繕積立金、ローン返済を差し引きます。固定資産税や保険料など年払いの支出は12か月に割って積み立てます。元金返済は現金が出ていく一方、税務上の必要経費と同じではない点にも注意します。
年次表では空室期間、募集費、原状回復、小修繕を加え、設備交換や大規模修繕への積立も別枠にします。積立後に赤字なら、突発支出時に自己資金が必要です。購入前は売主・管理会社の資料と契約、入金記録の整合も確認します。
- 入金:賃料、共益費、駐車場など
- 運営費:管理、共用部、保険、税、募集、修繕
- 資金調達:元金返済、利息、融資関連費用
- 積立:設備交換、大規模修繕、空室期間の返済原資
4. 空室・家賃下落・修繕を同じ年に発生させて試算する
楽観シナリオだけでは、収支の弱点を見つけにくくなります。基本ケースに加え、空室期間が延びる、更新時に賃料が下がる、募集費が増える、設備交換が重なる条件を置きます。単身向け、ファミリー向けなど物件特性により入替え頻度は異なるため、販売資料の想定だけでなく、現行契約、過去の入居履歴、周辺募集物件を確認します。
国土交通省の不動産情報ライブラリでは、取引価格、地価、防災、都市計画、周辺施設などを確認できます。これらは将来の賃料や売却価格を保証する資料ではありませんが、提示された価格の背景を調べる入口になります。現地では駅からの経路、騒音、日照、管理状態、競合する供給を自分の目でも確かめましょう。
- 空室が数か月続くケース
- 賃料と更新料が下がるケース
- 募集費と原状回復費が同時に出るケース
- 設備交換や共用部修繕が前倒しになるケース
5. ローンは金利だけでなく、返済条件と手元資金で見る
借入れを使えば空室でも返済は続きます。金利、期間、返済方法、変動・固定、手数料、保証、繰上返済、売却時の完済条件を一覧にします。変動金利は上昇後の返済額、固定期間がある場合は終了後の条件も確認します。
頭金に自己資金を使い切ると、購入直後の空室や修繕に対応できません。残す生活資金と運営資金を先に決め、融資上限と負担できる借入額を分けます。借換えや売却は希望どおり実行できるとは限らないため、金利上昇と価格下落が重なるケースも試算します。
6. 税引き後の結果は、現金収支と帳簿を分けて確認する
国税庁は、不動産所得を総収入金額から必要経費を差し引いて計算すると案内し、固定資産税、損害保険料、減価償却費、修繕費などを例示しています。ただし、支払ったお金がすべて経費になるわけではなく、修繕と資本的支出などは個別確認が必要です。
現金が出ない減価償却費が所得計算に含まれる一方、返済額のうち元本部分は必要経費になりません。借入利息の税務処理は資金使途や時期などで異なるため、個別に確認が必要です。そのため「税務上は赤字」と「手元資金が増えた・減った」を混同しないことが重要です。契約書、賃料明細、請求書、領収書、借入返済表を保存し、取得前から税理士や税務署などへ自分の条件を確認しましょう。
- 現金収支表と不動産所得の計算表を分ける
- 収入・費用・借入れ・資産取得の証憑を保存する
- 節税額だけでなく、税引き後の手残りを確認する
- 制度変更や個別区分は税務の専門窓口へ確認する
7. 購入前に厳しい条件と出口を一枚で確認する
最終判断では、基本、楽観、厳しい条件の三つの収支表を横並びにします。厳しい条件には空室、賃料下落、金利上昇、修繕、税・保険の増加を同時に入れ、その状態が続いても生活資金を崩さず維持できる期間を確認します。販売会社のシミュレーションは前提を転記し、自分の数字で再計算してください。
出口では、売却価格から仲介費用、登記・融資関係費用、残債、税負担の可能性を差し引きます。短期間で売れるとは限らず、保有中の管理と返済も続きます。契約当日に結論を求められても急がず、建物・管理・賃貸・融資・税務の資料がそろわない場合は見送る選択肢を残しましょう。
- 第三者の資料で価格、立地、建物、賃貸状況を確認した
- 厳しい条件でも追加資金の上限を説明できる
- 借入契約と管理・サブリース契約を別々に読んだ
- 売却時の残債と費用を含む出口を試算した
- 一つの物件へ資産を集中させる影響を検討した