1. 「同じ職場なら全員同じ給与」という制度ではない

派遣労働者の同一労働同一賃金は、派遣労働者と通常の労働者の間にある不合理な待遇差を解消することなどを目指す仕組みです。職務の内容、責任、配置変更の範囲、経験や能力など、待遇の性質に関係する事情を考慮します。そのため、同じ建物で働く人の時給が異なるという事実だけで、直ちに制度違反かどうかを判断することはできません。

確認するときは、他人の給与額を聞き出すのではなく、自分の待遇がどの方式で、どの仕事や水準と比較して決められたかを派遣元へ尋ねます。基本給だけでなく、賞与、手当、退職金、教育訓練、福利厚生など項目ごとに整理すると、説明の不足や疑問点を見つけやすくなります。

2. 待遇の決め方には二つの方式がある

派遣元は、派遣労働者の待遇について「派遣先均等・均衡方式」または「労使協定方式」のいずれかを確保する必要があります。前者は派遣先の通常の労働者との均等・均衡を基にし、後者は派遣元で締結した一定の要件を満たす労使協定を基に待遇を決めます。どちらを採用するかは派遣元や対象となる派遣労働者によって異なります。

求人の時点では方式が分からない場合もありますが、労働契約を結ぶ前や派遣されるときの説明・明示で確認します。労使協定方式の場合は、自分が協定対象者であるか、協定の有効期間や対象業務も確認します。方式が途中で変わると説明された場合は、変更時期と待遇への影響を書面で質問しましょう。

  • 自分に適用される待遇決定方式
  • 方式が適用される期間と対象業務
  • 賃金、賞与、手当、退職金の決め方
  • 説明を受けた日と、受け取った書類の名称

3. 派遣先均等・均衡方式は、派遣先の比較対象者を基にする

派遣先均等・均衡方式では、派遣先から提供される比較対象労働者の待遇情報を基に、職務内容や配置変更の範囲などを踏まえて派遣元が待遇を決定します。職務内容と配置変更の範囲が同じ場合の均等待遇と、それらに違いがある場合でも不合理な待遇差を設けない均衡待遇という考え方があります。

比較対象者は、単に同じ部署で隣にいる人とは限りません。誰をどのような考え方で比較対象としたか、担当業務、責任、異動や役割変更の範囲の違いが待遇へどう関係するかを尋ねます。派遣先は比較に必要な情報を派遣元へ提供しますが、派遣労働者への待遇の説明は雇用主である派遣元へ求めるのが基本です。

  • 比較対象となる通常の労働者の選定理由
  • 業務内容と責任の範囲にどのような違いがあるか
  • 配置や職務変更の範囲にどのような違いがあるか
  • 待遇差がある項目と、その目的に沿った理由

4. 労使協定方式は、同種業務・地域の一般賃金などを基にする

労使協定方式は、派遣元が過半数労働組合、または適切に選ばれた過半数代表者と一定の要件を満たす協定を締結し、その協定に基づいて待遇を決める方式です。賃金については、同種の業務に同一地域で従事する一般労働者の平均的な賃金と同等以上となることや、能力・経験に応じた賃金改善の仕組みなどが求められます。

自分の時給を公表された平均額と単純に比べるだけでは、適用職種、地域指数、能力・経験調整、賞与・退職金の扱いを見落とす可能性があります。派遣元へ、どの職種分類と地域を使い、現在の能力・経験の段階をどう評価したかを確認します。協定の対象範囲と有効期間、評価を上げる条件も合わせて説明を求めましょう。

5. 賃金以外に、教育訓練と福利厚生も確認する

待遇には基本給だけでなく、通勤手当、賞与、退職金、各種手当、休暇、教育訓練などが含まれます。項目ごとに目的が異なるため、差がある場合の説明も別々に確認します。例えば通勤に必要な費用の扱いと、職務の成果を評価する手当では、決定時に考慮する事情が同じとは限りません。

派遣先が業務に必要な教育訓練を通常の労働者へ実施するときの対応や、給食施設、休憩室、更衣室などの福利厚生施設の利用にもルールがあります。利用できない、研修へ参加できないときは、派遣先の社員と違うという印象だけで結論を出さず、施設・研修の目的、対象、代替措置を派遣元へ確認してください。

  • 基本給、賞与、退職金、通勤手当、職務関連手当
  • 能力や経験を高める教育訓練と受講時間の扱い
  • 業務遂行に必要な派遣先の教育訓練
  • 給食施設、休憩室、更衣室の利用条件
  • 派遣元独自の休暇、健康支援、相談制度

6. 派遣元へ待遇差の内容と理由の説明を求められる

派遣労働者は、派遣元に対して待遇差の内容・理由や、待遇を決める際に考慮した事項について説明を求めることができます。質問するときは「同じ仕事なのに安い」とだけ伝えるより、対象の待遇項目、現在受けている説明、比較したい業務や責任を整理します。派遣元は説明を求めたことを理由に解雇などの不利益な取扱いをしてはならないとされています。

2026年7月12日時点で、厚生労働省は2026年10月1日から、雇入れ時や派遣時の明示事項に、待遇差の内容・理由などについて説明を求められる旨を追加する改正案内を公表しています。就業開始が改正日前後になる場合は、適用時点の最新様式と案内を公式ページで確認してください。説明を受けたら、質問と回答、使用された資料を保存します。

  • 適用方式と、その方式を自分へ適用する根拠
  • 疑問がある待遇項目と現在の金額・利用条件
  • 比較対象、職種分類、地域、能力段階などの考え方
  • 差がある場合の具体的な内容と理由
  • 評価を見直す時期と、異議・相談の窓口

7. 説明と実際が違うときは、事実と書類をそろえる

説明された賃金と給与明細が違う、利用できると聞いた研修や施設を断られた、といった場合は、日付、相手、説明、実際の扱いを記録します。雇用契約書、労働条件通知書、就業条件明示書、給与明細、待遇方式の説明資料をそろえ、まず派遣元の担当窓口へ具体的な項目を示して確認します。

派遣先の同僚へ給与や個人情報の開示を求めたり、現場だけで結論を出したりする必要はありません。派遣元の説明で疑問が解消しない場合は、都道府県労働局の需給調整事業担当や総合労働相談コーナーなどへ相談できます。個別の待遇が適切かは契約、方式、職務内容で判断が変わるため、資料を持って相談してください。